介護・福祉BCPで重要なケア・サービスを継続するためには、職員と家族の安全確保と参集基準の理解が重要です。これらを研修で徹底すると同時に携帯できるカードを持ち歩くことが良い方法です。
BCP研修の概要
感染症や自然災害のBCPについて、職員へ教育する研修の内容をBCPのステップごとに整理したものが、下記になります。加えて各学習で使える教材を書きました。特に、介護・福祉サービスの場合、職員の確保が業務継続の最重要課題になります。そのためにも、職員自身の防災対策を教えることが重要です。①~⑥に分けて教材の使い方を説明していきたいと思います。
今回は、初動対応、業務継続の研修で、「携帯カード、防災カード」をどのように活用し、説明するかをお話しします。
ステージ | 研修項目 | 教材(数字は投稿の回次数) |
---|---|---|
基本方針 | 基礎知識、基本方針、体制 | ①BCPガイドライン ◎施設・事業所のBCP |
事前準備 | 災害リスクの把握 災害対策の準備 | ②家庭の防災・市町村のハザードマップ ③感染対策マニュアル、災害対策マニュアル |
災害情報の収集 | ④防災アプリ | |
初動対応 | 安全確保 | ②家庭の防災・市町村のハザードマップ ③感染対策マニュアル、災害対策マニュアル |
安否確認 | ⑤携帯カード・防災カード | |
業務継続 | 参集基準 | ⑤携帯カード・防災カード |
サービス提供の継続 | ③感染対策マニュアル、災害対策マニュアル | |
その他 | 施設で備えている防災対策 | ⑥建物の安全性、食料・資機材等の備蓄 |
ケア・サービスの継続に必要な教育
今までの投稿の中で、基本方針では、BCPの概要や施設・事業所のBCP内容を説明し、事前準備では、災害リスクの把握や、災害情報の収集方法を学んできました。BCP研修で学ぶべき内容として、これだけで良いでしょうか? いいえ、BCPは、業務継続計画であり、基本方針でも記載されているようにケア・サービスの継続が最も重要です。そのために学ぶべきことは、以下の内容が必要不可欠になります。
- 職員および職員の家族の安全確保
- 発災時に就業していない職員の安否確認
- BCP発動と参集基準の明確化
そのために、携帯できる小さな紙に印刷・記入し、その紙を普段から職員に携帯してもらえるようにするのが、良い方法だと思います。厚生労働省のBCPひな形にも「携帯カード」という名前が挙がっていますが、実際のサンプルが示されておりません。そこで、携帯カードまたは災害カードとしてよくできている物を次に説明しますが、その前に、携帯カードに書かれている内容を次に示します。記載項目については、重要である➋~➏を黒丸に、それ以外を白丸で表しています。記載内容については、携帯カードに書くべき重要な項目には「〇」、書いても構わない項目には「・」、事例に出てきますがおすすめしない項目には「×」を付けています。
記載項目 | 記載内容 | |
①表紙 | 〇 | 災害時の行動ステップ |
➋事前準備 | 〇 ・ × × | 個人の情報、病気・薬・病院 防災用品(一次持出品) 非常持出袋 防災用品(二次持出品) 備蓄品 家庭内の地震対策 |
➌発災時の対応 | × 〇 〇 〇 〇 | 身の安全(シェイクアウト) 場所別の安全行動 避難時の対応、避難経路図 発災時の出社・帰宅のルール、帰宅経路、帰宅困難者 助け合い(初期消火、救出活動、応急手当) |
➍家庭の安全確保 | 〇 〇 〇 ・ 〇 | 家族の連絡先 防災伝言ダイヤル 災害用伝言板 災害発生時にかかりやすい電話 避難場所・避難所 |
➎BCPの対応 | 〇 〇 | BCP発動条件 BCP初動対応 |
➏情報収集 | 〇 × | 情報WEBサイト 自治体の連絡先 |
⑦その他災害対応 | ・ 〇 〇 ・ × | 南海トラフ地震臨時情報の流れ 津波対応 水害対応(警戒レベル) 弾道ミサイル対応 新型コロナ |
⑧メモ | ・ | 自由記述 |
そこで、今回は、携帯カードの事例を、次に示したいと思います。
携帯カード・防災カードの事例
太字のものは、次に画像で紹介してあります。カード名をクリックすると、当該ページを開きます。
都道府県 市区町村 | カード名 | 掲載内容 | ページ数、提供媒体 |
内閣府 | 災害・避難カード | -➋➌➍--⑦⑧ | 4P、pdf+PPT |
埼玉県 さいたま市 | サバイバルカード | ①➋➌➍-➏⑦- | 16P、pdf |
千葉県 柏市 | 防災カード | ①➋➌➍-➏-- | 10P、pdf |
東京都 世田谷区 | 防災カード | ①➋➌➍---- | 12P、pdf |
東京都 あきる野市 | 防災カード | ①➋➌➍-➏-⑧ | 8P、pdf |
神奈川県 | かながわけんみん 防災カード | ①➋➌➍-➏⑦⑧ | 16P、pdf |
静岡県 | 命のパスポート | ①➋➌➍-➏⑦- | 16P、pdf |
大阪府 | 従業者BCP携行カード | -➋➌➍➎-⑦- | 8P、pdf+PPT |
大阪府大阪市住之江区 | 避難カード | ①➋➌➍-➏⑦- | 8P、pdf |
大阪府 堺市 | マイ避難カード | -➋---➏⑦⑧ | 4P、pdf |
兵庫県 姫路市 | 命のパスポート | ①-➌----- | 16P、pdf+LINE |
愛媛経済同友会 | 防災カード | ①➋➌➍-➏⑦- | 16P、pdf+EXCEL |
日本技術士会 | 防災カード(首都圏版) | ①➋➌➍-➏-⑧ | 16P、pdf |
クリックすると次のものが開きます。カード名:当該カードのページ、pdf:当該カード、画像:詳細画像
水害用にできている(地震に未対応)。
他の携帯カードにない重要な情報が書かれている。災害時にかかりやすい電話、帰宅するか迷ったら
弾道ミサイル、シェイクアウトが書かれている。
南海トラフ地震を詳しく説明したカードになっている。
BCPを意識した携行カード(ただし一般企業向けの内容は見直しが必要)になっている。
避難先の地図が書けるスペースがあります。
下記の16枚以外にも追加・差し替えができるサブ・カードがたくさんエクセルには準備されている。
日本技術士会/防災カード(首都圏版) pdf 画像1 画像2
首都圏に特化しており帰宅困難者の対応が書かれている。ただし、16ページに分かれているので、印刷時に工夫が必要です。
まとめ
携帯カードを普段からお財布などに入れて持ち歩き、災害時に取り出し、落ち着いて行動ができるようにするように、研修で携帯カードを作り方と使い方を学びましょう。そのためには、今回の例を参考に作るのも良いですし、そのまま例を使っても構いません。今回は、パワーポイント、エクセルで、各施設・事業所で内容を変更できる形式のものもあります。また、手書きで氏名や住所を記入して使うのであれば、pdfのファイルを印刷して使うことも可能です。当ブログの運営団体であるBCM研究所が作成した携帯カードのひな形のパワーポイントを以下からダウンロードできますので、よろしければ、ご活用いただければ幸いです。