地震発生時に身を守る訓練 シェイクアウト訓練

介護・福祉BCP訓練にお困りではないでしょうか? 地震の実働訓練としてシェイクアウト訓練をご紹介します。この訓練は、地震発生時の各人がとるべき身を守る行動を実際に体験する訓練です。まず低く、頭を守り、動かないの3つの動作を行います。

目次

介護BCPの訓練は難しい?

今年4月から介護・福祉事業所では、BCP訓練が義務化されました。入所系、通所系の一部の事業所では、消防法の防火訓練や避難確保計画の避難訓練を実施しており、これをBCP訓練として数えている例も、よくお聞きします。しかし、これらの訓練は、必ずしもBCPの訓練にはなりません。BCPの訓練のうち、対策本部員向けの訓練としては、以前にウォークスルー訓練をご紹介しました。今回は、地震を想定した実働訓練(実地訓練)の例としてシェイクアウト訓練を紹介します。

シェイクアウト訓練とは

地震の実働訓練で一番重要な点は、職員、利用者の安全を確保するための行動を理解し、発災時に各人が身を守る行動ができるようにすることです。そのための訓練として、日本シェイクアウト提唱会議(効果的な防災訓練と防災啓発提唱会議)が普及している「シェイクアウト訓練」があります。当会議のホームページは下記です。

「シェイクアウト訓練」とは、地震の揺れを感じたら、直ぐに次の行動を取ります。

  • 姿勢を低くする。
  • 頭を守る。
  • テーブルや机につかまり、動かないようにする。

もし、テーブルや机がない場合は、その場で身を屈め、頭を守るような姿勢を取ります。ダンゴムシのポーズと覚えてください。身近に頭を守れるもの(例えば、カバン、洗面器など)があれば、それを使うのも一つの方法です。紹介動画(平塚市 1分でわかる防災講座「シェイクアウト訓練」)も参考までに、掲載しておきます。

最近では、都道府県と政令指定都市が、シェイクアウト訓練を推奨し、実施しています。実施した都道府県と政令指定都市の一覧を「備忘録」のページに掲載しました。

介護施設、在宅者自宅をイメージした訓練の例

介護施設・事業所でシェイクアウト訓練を実際に行うのは、どうしたら良いでしょうか?

以下の手順で進めると良いと思います。また、研修時に、リスクや対応策を職員でディスカッションし、共有する方法もあります。

  • BCP研修でシェイクアウト訓練について教えます。先の動画を視聴するのも1つの方法です。
  • 訓練日時を決めます。職員の配置、作業も考慮して決めると良いと思います。
  • 当日、当該時刻に放送で訓練のアナウンスをします。1分後に、訓練の終了を告げます。
  • で、職員は、全員、その場で安全動作(まず低く、頭を守り、動かない)を取ります。
  • 訓練完了後に、全職員から上手く行えた否かをアンケート等で確認します。上手くできなかった場合は、今後の対策を検討し、次回の訓練に反映します。できれば、簡易なマニュアルにすると良いと思います。

では次に、介護施設・事業所の各場所・場面での事例を見てみたいと思います。

事務所

【基本行動】「まず低く、頭を守り、動かない」を迅速に行います。
【リスクと対策】机のパソコンなどが落下してきます。
事前に落下防止の対策を実施します。
キャビネットが倒れてきます。
事前に転倒防止を行います。壁に固定できない場合は、
例えば天井とキャビネットの間に転倒防止の器具を設置します。
コピー機が移動し人に衝突します。
最低限、アジャスター(車輪以外にネジを回すと足が床まで伸びるもの)で
床から浮かせます。できれば、車輪の部分にストッパーを設置したり、
ワイヤーやチェインで固定する方法もあります。

居室、トイレ

【基本行動】机などがないので、ダンゴムシのポーズをその場で迅速に取ります。
【リスクと対策】タンス(背が低くても)が倒れます。
事前にタンスを壁などに固定します。
窓ガラスが割れてケガをします。
窓から離れます。
ベッドが移動し人に衝突します。
最低限、キャスターをロックしておきます。
キャスターがロックされていても、震度6や震度7では
ベッドは移動することを理解しておきます。
地震で驚いて利用者がベッドから飛び降りてケガをします。
できるだけ被害がでないように、シェイクアウトを教えます。
ベッドで寝ている場合は、ベッドの上で動かないようにします。
トイレを使用中に地震が来た場合は、あわてずに手すりにつかまります。

食堂、機能訓練

【基本行動】テーブルなどがある場合は、テーブルの下で動かないようにします。
テーブルなどがない、または、テーブルの下に入れない場合は、
ダンゴムシのポーズをその場で迅速に取ります。
【リスクと対策】利用者がご自身で動ける方の場合は、シェイクアウトを教え、
実行できるようにします。
車椅子の方は、その場で頭を下げて、身を丸めます。
機能訓練の機器が移動したり、転倒したりします。
機器を固定します。

浴室、脱衣場

【基本行動】裸や裸足ですが、その場でダンゴムシのポーズを迅速に取ります。
浴槽の中にいる場合は、浴槽から出ようとせずに、浴槽につかまります。
【リスクと対策】窓ガラス、鏡、照明が破損し、ガラス片などで足をケガします。
破損してもガラス片が飛散しないように保護フイルムなどで対策します。
重い浴槽が、地震の揺れで移動し、人に衝突しケガをします。
浴槽を床に固定します。
裸のまま避難できないうえに、余震などもあり、着替えが難しいです。
脱衣場に利用者の体をくるめる大きな布を用意しておきます。
例えば、シーツなど。安全な場所へ移動後に着替えをします。

送迎途中、訪問移動中

【基本行動】車を運転中にスマホの緊急地震速報がなったら、
車を減速し、路肩などに停車させます。
自転車やバイクを止め、その場でダンゴムシのポーズを取ります。
【リスクと対策】崖崩れ、橋の崩壊、壁や家屋の倒壊などのリスクがあります。
このような場所からは、速やかに避難します。
電話やデータ通信が混乱して通じにくい状況が発生します。
そのため、職員が独自の判断で行動できるように、
行動基準を決めて周知徹底します。例えば、デイサービスの場合、
送迎を中断するのか否かなどのルールを事前に決めておきます。

利用者宅

【基本行動】テーブルなどがない場合は、ダンゴムシのポーズをその場で迅速に取ります。
【リスクと対策】タンスや食器棚が転倒するリスクがあります。
できれば事前に転倒防止策を行ってもらうようにお話しします。
タンスや食器棚から速やかに離れます。
窓ガラスが割れて飛散し、ケガをするリスクがあります。
窓から少し離れた場所にベッドを置くようにお話しします。

まとめ

地震の実働訓練としてシェイクアウト訓練をご紹介しました。非常に簡単な「まず低く、頭を守り、動かない」の3つの動作が、迅速に取れるように、定期的に研修・訓練を通じて職員が体得することが重要です。その中で、居場所ごとに、どのように安全行動を取るべきかを説明しました。とくに、各場面でのリスクについても、簡単に解説しました。是非、皆様の現場でもリスクを事前に感知し、リスク低減策を地道に進めて行くことが、災害時の被災を低減するための近道だとご理解いただき、一歩ずつ進められることを祈念しております。

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