2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類へ移行しました。これを受けて厚生労働省が介護の感染症BCP(業務継続計画)ガイドラインを大幅に見直しました。本記事では、介護施設等に求められる最新の対応と、ガイドライン更新の重要ポイントを解説します。
新型コロナウイルス感染症の現状と5類移行の影響
2023年5月に、新型コロナウイルス感染症が、感染症法の5類(季節性のインフルエンザと同じ分類)に移行しました。変化点は、下記になります。
- 政府や都道府県の措置の廃止。例えば、感染者の入院・外出制限。飲食店等の営業時間短縮。
- 感染者や濃厚接触者の把握、集計の取りやめ。
- 屋内でのマスクの着用の廃止。ただし、高齢者等重症化リスクの高い者への感染を防ぐため、高齢者施設等ではマスクの着用を推奨しています。
- 医療費、ワクチン接種の有料化など。
その結果、感染者数も、インフルエンザと同じく、定点把握になりました。しかし、2024年5月以降、3回目の波(通算で第11波)が、九州地区を中心に来ています。詳細(下記グラフは8月16日現在)は、以下のNHKのサイトを参照ください。今後、お盆休みで大勢の人が移動するので、感染拡大が心配です。
介護・福祉サービスに求められる新たな対応
新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことで、以下の順番で手引きやガイドラインが見直されました。
(2023年8月21日)
感染対策普及リーフレット(第3版)
感染症マニュアル概要版(施設系、通所系、訪問系)
(2023年9月25日)
(2024年3月31日)
ただし、介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修のページで公開
障がい者福祉向けの「障害福祉サービス事業所等における感染対策指針作成の手引き」、「障害福祉サービス施設・事業所職員のための感染対策マニュアル」、「障害福祉サービス事業所等における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」は、現時点(2024年8月16日)で更新されておりませんので、ご注意ください。
まずは、医療現場の診療手引きが5類対応になり、それを受け介護の感染対策手引きが更新され、最後に介護BCPのガイドラインが更新されました。ただし、筆者が見る限り、BCPガイドラインの更新については、事務連絡を探すことができませんでしたので、皆さまが、ご存じないかも知れません。
感染症BCPガイドラインの主な更新ポイント
では、ガイドラインのどこが見直されたのでしょうか?介護BCPのガイドラインの大きな変更点は、以下になります。
- ガイドラインのタイトルが変わりました。「新型コロナウイルス感染症発生時」が、「感染症発生時」と新型コロナウイルスが削除されました。これは、新型コロナウイルス感染症以外にもインフルエンザやノロウイルスなど多くの感染症にも備えてほしいという思いからです。別の見方としては、現在、世界的なパンデミックが懸念されている新型インフルエンザがあるため、感染症のBCPを維持する方が、将来のリスクに備えられるという考え方もあります。新型インフルエンザは、また、別の機会に投稿したいと思います。
- 5類対応で変化した点を見直しました。濃厚接触者、自宅待機、休業などを見直しました。
- 「介護現場における感染対策の手引き」が、第3版になった点を修正しました。
大きな変更は、ありませんが、皆さまのBCPについても、タイトルや5類対応の変更点を見直していただければと思います。
新ガイドラインに基づくBCP見直しの重要性
今回の感染症BCPガイドラインの更新に合わせ、以下の点も変更されています。
(1)自然災害BCPガイドラインの見直し。
「警戒レベル」が2021(令和3)年に以下のように見直された点を修正しました。また、文言の追加、修正をしました。BCPの行動基準や参集基準で警戒レベルを明記している場合は、文言を直してください。例えば、警戒レベル3は、避難準備→高齢者等避難になっていますか?
(2)BCP作成の解説動画の更新。
感染症、自然災害BCP作成に関する解説動画をサービス類型別にしました。特に居宅介護支援を追加しました。以下に、例としてBCP作成(居宅介護支援)の解説動画(ユーチューブ)をリンクします。感染症、自然災害のBCPひな形もガイドラインに合わせて更新してあります。
(3)研修・訓練の解説動画の追加。
義務化された研修・訓練に関する解説動画を追加しました。ただし、施設・事業所ごとに状況が異なる部分は、具体的に説明できていません。これらの点については、今後、このブログで詳しく説明していきたいと思いますので、引き続きご覧いただければと思います。以下に、例として机上訓練(入所系)の解説動画(ユーチューブ)をリンクします。
結論として、感染症BCPは、新型コロナウイルス感染症が5類に移行した後も引き続き重要です。最新のガイドラインに基づき、皆さんの施設・事業所の感染症BCPについて、必要に応じて以下のアクションをお勧めします。
- 最新のガイドラインを確認する。
- BCPのタイトルと内容を見直す。
- 5類対応に伴う変更点を反映させる。
- 職員への研修・訓練計画を策定し実施する。