大震災時に徒歩で帰宅? 「帰宅困難者」は施設・事業所で72時間待機!

大規模災害時に公共交通機関が止まったり、道路が通れなくなどで、徒歩で帰宅することが難しい状況が起こります。特に都市部では、帰宅困難者が施設・事業所で72時間の待機が求められています。今回は、東日本大震災の教訓を踏まえ、取るべき対策を解説します。

目次

帰宅困難者とは

帰宅困難者については、内閣府が以下のように定義しています。

各地区の滞留者のうち、自宅までの距離が遠く、徒歩による帰宅が困難な人の数とする。

  • 帰宅までの距離が10km以内の人は全員「帰宅可能」とする。
  • 帰宅距離10km~20kmでは、被災者個人の運動能力の差から、1km長くなるごとに「帰宅可能」者が10%低減していくものとする。
  • 帰宅距離 20km以上の人は全員「帰宅困難」とする。

10kmとか20kmとは、どれくらいの距離でしょうか。東京、横浜、名古屋、大阪で見てみましょう。

東京駅から10kmと20km
横浜駅から10kmと20km
名古屋駅から10kmと20km
大阪駅から10kmと20km

10km以上(体力や年齢により異なる)、歩くのが難しいのでしょうか?

普段であれば、大人は、1時間に4~5km歩けます。しかし、大地震で建物が倒壊していたり、橋が渡れなくなっていたり、足元には、がれきやガラスが散乱していたりすると、普通の歩く速度では歩けません。一般には、普段の半分の速度、1時間に2.0~2.5kmしか歩けないと言われています。つまり、10kmだと4~5時間、歩くことになります。冬だと明るい間、歩くことになると言うことです。

東日本大震災の教訓

2011年3月11日の東日本大震災では、どれくらいの方が帰宅難民になったでしょうか?
政府の推計では、首都圏で合計515万人が当日自宅に帰れない帰宅困難者となりました。内訳は、東京都で352万人、神奈川県で67万人、千葉県で52万人、埼玉県で33万人、茨城県で10万人でした。首都直下地震では、1都3県で帰宅困難者650万人、南海トラフ地震では大阪・名古屋などを中心に、帰宅困難者420万人にのぼると想定されています。

この東日本大震災後の調査結果から、以下のようなことが、報告されています。

  • 一斉帰宅による混乱
    大量の人々が一斉に徒歩で帰宅を始めたことで、道路の混雑や疲労による事故が発生しました。また、コンビニエンスストアやガソリンスタンドに人が殺到し、混乱を招きました。
  • 情報不足による判断の遅れ
    公共交通機関の運行状況や道路状況などの情報が不足し、帰宅の判断が遅れる事例が多発しました。
  • 施設・事業所での待機の重要性
    むやみに移動を開始せず、施設・事業所で待機することの重要性が認識されました。

東日本大震災では東京都は震度5強でしたが、JRは当日終日、運行を停止しました。私鉄は当日一部運行を行いました。それでも、515万人が帰宅困難者になりました。しかし、首都直下地震や南海トラフ地震では、もっと強い揺れが予測されており、すぐには運行が開始されませんので、徒歩での帰宅を考える必要があります。また、道路は緊急車両の通行を優先するため、自動車でも帰宅できません。それゆえ、施設・事業所での72時間の待機が重要になります。待機期間を3日と決めると、発災日を1日目と数える人がでて、待機期間がずれてしまいます。72時間と言っているのは、発災から72時間は待機して欲しいということです。

帰宅困難者への自治体の取組状況

東日本大震災の経験から東京都では、帰宅困難者への対応を条例として明文化し、パンフレットや動画で広報しています。帰宅困難者への対策では、行政が対策を実施する「公助」だけでなく、個人や企業による自主的な対策を実施する「自助」「共助」が求められています。

①一斉帰宅抑制の推進
<都民の取組>
一斉帰宅の抑制
家族との連絡手段を複数確保
混乱収拾後の徒歩帰宅に備え、
  自宅までの経路の確認と職場等での歩きやすい靴の準備など
①一斉帰宅抑制の推進
<事業者の取組>
従業員の一斉帰宅抑制
3日分の水・食料などの備蓄
従業員との連絡手段の確保など
駅や集客施設等での利用者保護
②安否確認及び情報提供 各区市町村、防災関係機関と連携
協力した災害関連情報提供体制の確立
安否情報の確認手段の周知と災害関連情報等の提供
③一時滞在施設の確保 都立施設等を一時滞在施設に指定
国や区市町村、民間事業者に一時滞在施設確保の協力
④帰宅支援 災害時帰宅支援ステーションの確保
バス・船などの代替輸送手段の確保

東京都の広報動画

大阪府の広報動画

帰宅抑制への備え

72時間の帰宅抑制については、内閣府のパンフレットが参考になります。施設・事業所としては、帰宅困難者の3日分の水・食料、トイレ、宿泊の準備が必要です。

パンフレットの内容の要約は、以下になります。

  • 災害発生時、人命救助のデッドラインは72時間と言われています。救助・救命活動の妨げや、徒歩帰宅中に余震等での二次災害に遭うおそれがあるため、災害発生から72時間はむやみに移動せず、安全な場所に留まってください。
  • 「とりあえず」で駅に向かわない!
  • 不安を減らし、帰りたい衝動を減らすために、正しい情報を収集することと家族等の安否を確認する。
  • 人命救助と自身の安全のために、「帰らない」を選択!
  • 職場などの拠点がない人は、近くの「一時滞在施設」で待機する。そのために、「一時滞在施設」があることを知っておく。

一次滞在施設については、東京都の場合、下記に公開されている。

徒歩帰宅グッズとしては、以下の備蓄が必要になります。

  • 【水・食料】 ペットボトル飲料水(水筒)、チョコ・キャラメルなど(携帯食料)
  • 【情報収集】 携帯電話の予備バッテリー・充電器、地図(帰宅マップ)、携帯ラジオ
  • 【服装  】 歩きやすい靴、マスク、帽子、保温シート、リュックサック
  • 【その他 】 携帯トイレ、懐中電灯など

また、長時間歩くためには、水や食料の補給、トイレ、情報の収集などが必要になります。そのため、幹線道路沿いのコンビニやガソリンスタンドなどの一部が、「災害時帰宅支援ステーション」となります。「災害時帰宅支援ステーション」には、以下のようなステッカーが貼られていますので、普段から注意して見るとよいと思います。

まとめ

今回は、電車等の公共交通機関で通勤している方が、帰宅困難者になった場合の対応について説明しました。施設・事業所側で取るべき備蓄品の準備に加え、歩きやすい靴などの帰宅困難者になる職員が備えるべきものもあるので、協力して備えることが必要です。しかし、都市部で自家用車通勤の方についても、厳しい規制があります。今回は、警視庁のホームページについての紹介に留めます。

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