訓練の種類
訓練に良く聞かれる質問としては、「毎年、避難訓練を実施しているので、BCPの訓練は不要ではないですか?」、と聞かれます。防災訓練は、火災や水害などの訓練で、消防法や水防法で決められている訓練です。具体的には、避難誘導、初期消火、救出・救護があります。防災訓練は、避難するところまでで、サービス継続の訓練にはなりません。もし、防災訓練とBCP訓練を同時に実施するのであれば、避難訓練のあとに非常食の調理をするなどを実施する方法があります。
さて、BCPの訓練には、どのようなものが、あるでしょうか?
- 参集訓練:夜間、休日を想定し、対策本部員が事業所へ参集
- 対策本部設置訓練:災害が発生した想定で、対策本部を設営
- 安否確認訓練:施設内・外の職員等の安否を実際に確認
- 実働訓練(実地訓練):機器の操作等、マニュアルに沿って実際に実施
- 総合訓練:地域等と協力し、一連の流れを確認
- 机上訓練(イメージ・トレーニング):災害発生から復旧までの流れを机上で確認
1~4は、BCPの初動対応と業務継続の重要な行動・サービスを確認する訓練になります。換言すれば、BCPの全体的な訓練ではありません。BCPの全体を確認するためには、5の総合訓練と、6の机上訓練になります。特に、机上訓練だけが、対策本部メンバーだけで実施できる訓練になります。
対策本部に期待されること
BCPにおいて、対策本部の設置は、非常に重要です。その理由は、以下のような事態が災害時に発生し、法人の理事長や施設長、事業所長などの判断が必要になるからです。例えば、以下のような判断があります。
- サービスを継続するか否かの判断。サービスが長期に中断し大きな損害が発生する事態への対応。
- お金や人的リソースが掛かる対策を行うか否かの判断。例えば、破損した機器の高額な修理など。
- 法人、施設・事業所内でクローズできない事態への対応を外部機関に依頼する判断など。
災害時には、色々な不測の事態が発生します。そのため、対策本部では、情報を迅速に収集し、責任者が判断し、判断したことを対策本部の各班が実行していきます。そのためには、以下の機能を備えた対策本部の設置が必要です。
- 各班が情報を収集し、さらに、対策本部で決定した事項を伝える情報伝達手段の確保。
- 各班の課題を、対策本部全体で対応策を検討し、議論できる場所の確保。
- 対策本部幹部が決定した対応策の進捗管理、及び未解決課題の情報の見える化。
では、皆様のBCPに対策本部の運営について、明記されていますか?
自然災害ガイドラインの3.緊急時の対応の(4)対応拠点の意味が理解できていますか?
同じくガイドラインの(10)復旧対応の情報整理の重要性を把握していますか?
これらの質問に応えられない場合は、過去の災害事例を学んだり、BCPカフェの今後の投稿で学習してみてください。
さて、皆様のBCPで対策本部について書かれている場合でも、対策本部のメンバーが理解していますか?
また、対策本部のメンバーが役割を理解していますか?
BCPを作成しただけでは、対策本部メンバーが充分に理解しているとは限りません。理解していない状況で机上訓練を実施しても、有意義なシミュレーションはできません。そのためには、BCPで重要な項目は、対策本部メンバーで理解し、共有しておくことが必要になります。そのための手法として、次に説明するウォークスルー訓練があります。
始めにやるべき訓練は、「ウォークスルー訓練」
まず始めにwalkthroughとは、どのような英単語でしょうか?
意味としては、通り抜け通路、演劇などのリハーサル、内部統制での実地検証と言った意味があります。ウォークスルー訓練の場合、演劇のリハーサルをイメージしてもらうとわかりやすいと思います。演劇では、はじめに「本読み稽古(けいこ)」という、椅子などに座って台本を読みながら稽古することが多いそうです。「本読み稽古」は、役者が相互に台本を、どのように理解しているのかを確認し合います。
BCPにおけるウォークスルー訓練は、BCPの内容を確認し、実現可能性を検討する訓練を指します。
ウォークスルー訓練では、以下の状況で実施します。
体制:本部長また副本部長と、対策本部の班長または副班長の約6名程度。加えて進行役や書記が参加しても良いです。
進め方:BCPの各項目を確認します。実施が難しい点や検討が不足している点を指摘します。同時に各班の役割や手順を確認します。
訓練時間:1~1.5時間程度で実施します。
まとめ
ウォークスルー訓練で重要なのは、何を確認するかです。以下に重要な点をウォークスルー訓練で確認し、BCPの実効性を確認しましょう。
- 災害のリスク。自然災害であれば、ハザードマップを確認し、災害のリスクを把握しているかを確認する。
- 安全確保。施設・事業所の内部または外部(送迎中や自宅在宅など)で災害にあった場合の行動基準を確認する。
- 安否確認。安否確認の手順が明確になっており、停電や電話の混雑による電話が通じないことを想定し、代替手段を検討しているかを確認する。
- サービス継続。優先業務の選択が正しいか、少ない職員数で優先業務を実施できるかを確認する。
- 人員確保、参集基準。災害時に、どの程度の職員が出勤できるのか、通信が混乱していても自動的に参集できるのかを確認する。