能登豪雨から考える水害対応(5) 能登豪雨を用いた机上訓練

能登豪雨を事例に、水害時の避難確保計画や、能登豪雨を事例にしたBCPの机上訓練について、5回で連載したいと思います。 最終回は、能登豪雨において警戒レベルが、どのように上がっていき、短期間で洪水や土砂災害が発生したかを理解します。また、各警戒レベルで何を考え、何を確認するかを具体的に解説します。6:26に大雨警報が発令、7:00に土砂災害警戒情報が発令、10時過ぎに洪水が発生しました。

➊避難確保計画とは
➋避難確保計画とBCPの違い
➌能登豪雨の実態
➍避難確保計画の訓練
能登豪雨を用いた机上訓練

目次

机上訓練の準備

机上訓練の準備を始める前に、水害などのリスクをハザードマップで正しく把握することが、非常に重要ですので、再度、お伝えしたいと思います。

水害などの机上訓練を実施するためには、以下の準備が必要です。

いつ(When)2時間程度。あまり長いと集中できなきなくなる。
どこで(Where)会議室。できれば災害時に対策本部にする場所が良い。
だれが(Who)避難確保計画の体制(メンバー)が参加。
統括指揮者、情報連絡班、避難誘導班、装備品等準備班の班長。
副班長もいる場合は両者が出席しても良い。
なにを(What)今回は能登豪雨を例にした机上訓練。
なぜ(why)避難確保計画の手順を理解する。
合わせて準備事項に抜けや不足の事項がないかを確認する。
避難確保計画、BCPの見直し・改善する。
どのように(How)シナリオ(訓練の筋書き)を決めて、実施する。
今回は以下のシナリオに沿って実施する。

訓練シナリオ

机上訓練では、時間経過とともに変化する災害状況を想定することが、非常に重要です。例えば、以下のようなシナリオ展開を検討します。今回は、早朝に高齢者等避難が発令されているので、入所系は、この設定で良いと思いますが、通所系の場合は、送迎やサービスが開始している時刻に読み替えていただければと思います。

時刻警戒レベル検討内容
9/20(日) 16:19警戒レベル2
大雨注意報 発令
➊情報収集を確認
➋連絡体制、連絡方法を確認
➌夜間や早朝に警報(警戒レベル3、高齢者等避難)が
 発令した場合を想定し、対応策を検討
9/21(月) 6:26警戒レベル3
(高齢者等避難)
大雨警報 発令
➍避難開始の判断基準は? 人員足りているか?
➎初動体制、初動行動を確認
9/21(月) 7:00警戒レベル4
(全員避難)
土砂災害警戒情報 発令
➏避難は終わっているか?
➐職員の帰宅をどうするのか?
9/21(月) 10:50警戒レベル5
(緊急安全確保)
大雨特別警報 発令
➑緊急安全確保に、どう対応するのか?

➊情報収集を確認

統括指揮者、情報連絡班が、キキクルなどで災害レベルを確認できるかを確認します。できれば、プッシュ型のスマホアプリの導入することをお勧めします。

気象庁 この雨大丈夫?そんな時は「キキクル(危険度分布)」

➋連絡体制、連絡方法を確認

推進体制、連絡網に変更がないかを確認します。連絡する内容を確認します。電話連絡網で連絡する場合、連絡にかかる時間を考えてみます。

➌夜間や早朝に警報(警戒レベル3、高齢者等避難)が発令した場合を想定し、対応策を検討

この事例では、夕方に警戒レベル2(注意報)が発令されたので、夜間や早朝に警戒レベル3の高齢者等避難が発令された場合の対応を、事前に検討しておきます。入所系の場合、夜間や早朝に避難しなければならなくなった場合の対応を考えます。

➍避難開始の判断基準は? 人員足りているか?

早朝に避難を開始することになりますが、少ない人数で避難を開始するのかを検討します。例えば、職員が何名になったら避難を開始するかを考えておきます。

➎初動体制、初動行動を確認

避難の準備や手順、避難経路などを確認します。特に、水平避難(立ち退き避難)では、避難経路の途中が浸水している場合を想定した代替ルートを考えます。合わせて、自動車で避難できるかも確認します(アンダーパスなど)。詳しくは、先の投稿をご参照ください。

BCP Cafe 能登豪雨から考える水害対応(4) 避難確保計画の訓練

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➏避難は終わっているか?

実際に避難訓練を実施し、避難時間を事前に把握しておきます。今回は、線状降水帯による豪雨のため、警戒レベル3(高齢者等避難)から警戒レベル4(全員避難)まで約30分しかありませんでした。30分で避難が終わらない場合、全員避難が出たら、どう対応しますか?

➐職員の帰宅をどうするのか?

警戒レベル4(全員避難)が出たときに、職員が帰宅したいと言い出す可能性がありますが、その際には、どうしますか?

➑緊急安全確保に、どう対応するのか?

警戒レベル3(高齢者等避難)から警戒レベル5(緊急安全確保)まで、約4時間半ですが、避難が完了し、利用者と職員の安全が確認できていますか? 緊急安全確保の発令に対して、何を行いますか? 例えば、実際に水害が発生していますが、浸水の状況を、どのように把握しますか? その際に、身の危険が及ぶことはないでしょうか?

最後に、机上訓練後に必ず振り返りの時間を設け、訓練についての反省会を実施し、避難確保計画の改善に活かします。机上訓練の最大の目的は、潜在的な課題を見つけ、事前に対策を立てることです。

おわりに

全5回で能登豪雨を振り返り、この豪雨を題材とした机上訓練について、解説しました。机上訓練では、架空の時間軸の設定より、実際の災害の時間軸をベースに検討することで、実際の災害の厳しさをご理解いただけると考えております。実際の行動につながる机上訓練は、施設・事業所の防災力を高める鍵となります。一人一人が真剣に取り組むことで、いざという時の被害を最小限に抑えることができますので、是非、訓練に活用いただければ幸いです。

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