能登豪雨から考える水害対応(4) 避難確保計画の訓練

能登豪雨を事例に、水害時の避難確保計画や、能登豪雨を事例にしたBCPの机上訓練について、5回で連載したいと思います。今回は、避難確保計画の訓練には、どのようなものがあるかを説明します。情報収集、初動対応、避難準備、避難誘導の大きく4つの区分で計7種類の訓練があり、各訓練の手順を簡単に解説します。特に、訓練で注意すべき点は、関連した動画などを紹介したいと思います。

➊避難確保計画とは
➋避難確保計画とBCPの違い
➌能登豪雨の実態
➍避難確保計画の訓練
➎能登豪雨を用いた机上訓練

目次

1. 情報収集・共有

訓練の目的
防災体制を確認し、気象情報の迅速な収集と的確な判断、施設内での情報共有スキルを向上させます。

具体的な訓練内容

  • 防災体制において各班の取りまとめ者に変更などがないかを確認
  • 注意報、警報をウェブで検索できる、または、スマホのアプリで受信できることを確認
  • 水位情報をウェブなどでリアルタイムに確認
  • 収集した情報の伝達先を確認し、情報共有方法を確認
  • 責任者による避難判断基準を確認
  • 避難指示の伝達方法を確認

注意すべき点
防災アプリの使い方と、情報伝達の訓練の動画を以下に示しています。

気象庁 身にせまる災害を一目で確認「キキクル(危険度分布)」

NHK [明日をまもるナビ] 大雨で洪水!『キキクル』が紫ならすぐに避難を!1分で防災の知恵

徳島県チャンネル 避難訓練の映像(洪水編)

徳島県 避難訓練の映像(土砂災害編)

2. 職員参集

訓練の目的
災害時に必要な職員を迅速かつ確実に招集する手順を確認します。

具体的な訓練内容

  • 参集の手順を確認
  • 緊急連絡網を使用し、職員へ連絡
  • 参集可能な職員を把握
  • 人員不足時は代替要員への連絡体制を確認
  • 参集時の移動手段と経路を事前に確認
  • 実際の参集時間を確認

注意すべき点
緊急連絡網については、電話連絡だと連絡に時間と工数がかかるので、SNSやメールの活用が便利です。SNSの事例としてLINE WORKSを紹介します。

LINE WORKS 3分でわかるLINE WORKS(概要編)

LINE WORKS 3分でわかるLINE WORKS(機能編)

3. 情報伝達

訓練の目的
正確で迅速な情報伝達と明確な指示系統を確立します。

具体的な訓練内容

  • 災害対策本部の設置
  • 組織内の指示系統の確認
  • 情報の伝達(口頭、電話、無線、メール)
  • 外部機関(消防、警察、自治体)との連絡
  • 情報伝達の正確性と迅速性の検証

注意すべき点
情報伝達時に、どこへ何を伝達するかについては、まとめておくことが重要です。その例として、厚生労働省の感染症BCPガイドラインの図を示します。

厚生労働省 介護感染症BCPガイドライン

4. 資器材・備蓄品等の準備

訓練の目的
必要な資器材と備蓄品を適切に管理し、迅速に活用する能力を高めます。

具体的な訓練内容

  • 備蓄品のローテーションと管理方法の確認
  • 備蓄品の数量と保管状況の確認
  • 救助用具、救急用品の確認
  • 資器材の点検と動作確認(例、非常用発電機の稼働)

注意すべき点
避難誘導に使う備蓄品については、避難確保計画に例示されています。

国土交通省 要配慮者利用施設の浸水対策

5. 移動に向けた準備

訓練の目的
安全かつ迅速な移動のための事前準備を確認します。

具体的な訓練内容

  • 避難経路の事前確認と複数ルートの検討
  • 移動に必要な装備品の準備
  • 要支援者の移動支援計画の策定
  • 車両や移動手段の確保と点検
  • 地図、通信機器の活用訓練

注意すべき点
洪水時に避難経路に使うと問題がある事例を以下に示しまし。1つは、冠水時に道路の側溝などが見えなくなる。言い換えると、ガードレールや電柱などがない道路(下の写真では電柱が一直線に並んでいない)。もう1つは、アンダーパスと呼ばれる雨水が溜まる場所。

6. 施設内の避難誘導

訓練の目的
施設内での混乱を最小限に抑え、安全に避難する方法を習得します。

具体的な訓練内容

  • 施設内避難経路の確認および障害物への対処
  • 避難誘導の役割分担
  • 要支援者の優先的避難方法
  • 誘導時の声かけと安全確保

注意すべき点
洪水時に実際にどのように垂直避難の仕方の例を以下に示します。

TBS 長野「全員避難の高齢者施設いったいなぜ」

BSN新潟 「雨が降るだけで不安にかられる」夜間の豪雨で避難どうする?入所者をおぶって避難した高齢者施設の模索

7. 施設外への避難誘導

訓練の目的
施設外への安全で秩序ある避難を実現するスキルを磨きます。

具体的な訓練内容

  • 避難場所までの最適ルート確認
  • 避難誘導の役割分担
  • 要支援者の外部避難支援
  • 避難中の情報収集と状況判断
  • 外部機関との連携と情報共有

注意すべき点
洪水時に実際にどのように水平避難(立ち退き避難)の仕方の例を以下に示します。

松原市役所 要配慮者利用施設における避難訓練(水平避難)

まとめ

水害などの訓練は、単なる形式的な演習ではなく、実践的なスキルと組織の対応力を高める重要な取り組みです。定期的な訓練を通じて、チームの防災意識と対応能力を継続的に向上させることが、被害を最小限に抑える鍵となります。

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